成長戦略とKPI
更新日:2022/11/15
全社中期目標
当社グループは、中長期の目標として「2023年度に過去最高益、営業利益2,250億円の達成」を掲げてきました。しかし近年、M&Aや設備投資などが増加しており、これらに関連した会計上の処理に伴う影響や、戦略投資による効果も勘案したキャッシュベースでの評価をしやすくするために、利益面でのKPIを調整後EBITDAに変更しました。
新しい中期経営指標では「2023年度に売上収益2兆円、調整後EBITDA 3,900億円の達成(従来の営業利益目標2,250億円に相当)」を掲げました。これは、LINEとの経営統合によって見込まれる増益分を大胆な戦略投資に回してもなお、この利益目標を達成するという固い決意を示しています。利益目標の達成とともに、中長期成長を加速するための投資を実施することで、この経営統合がなければ達成できないような大きな成長の実現を目指します。
全社 中期目標(経営指標)
売上収益(FY2023経営指標)2兆円
調整後EBITDA※1(FY2023経営指標)3,900億円
格付の維持を意識した適正な
財務レバレッジ
ネットレバレッジレシオ※22.5倍~3倍
水準を維持
格付の維持R&I:A+,
JCR:AA-
- ※1:調整後EBITDA :営業利益+減価償却費及び償却費±EBITDA調整項目
EBITDA調整項目:営業収益・費用の内、非経常かつ非現金の取引損益(固定資産除却損、減損損失、株式報酬費用、段階取得差損益、その他現金の流出が未確定な取引(一時的な引当金等)等) - ※2:銀行業除く


2021年度の成果
2021年度の売上収益は、1兆5,674億円、調整後EBITDAは、3,314億円となり、ともに過去最高を達成しました。特に、LINEは広告事業の着実な成長により売上収益が3,000億円を突破、投資規律の向上により安定的な黒字化を果たし、調整後EBITDA、連結営業利益の拡大に寄与しました。
データガバナンスの強化を最優先に取り組んできたことに加え、経営統合のPMIを推進し、100億円規模のコストシナジーの創出や、組織・事業再編等、様々な施策を実行しました。
メディア事業では、Yahoo!広告からLINE NEWS面への広告配信を開始しました。また、LINE、ヤフー、ソフトバンク共同で、上位顧客向けの営業連携を進め、広告パッケージ商品の販売を開始しました。
コマース事業では、「Yahoo!ショッピング」、「PayPayモール」※4や「ZOZOTOWN」との連携により「LINEギフト」が大きく成長しています。今後も当社グループが保有する多様なアセットを活用し、サービスを拡大していきます。また、ヤフー、アスクル、出前館との協働による「クイックコマース(即配サービス)」も開始しました。日用品や食料品の即配ニーズ、拠点・配達オペレーションの実現性を確認でき、注文後最短15分でユーザーに届けるという新しいコマース体験を提供するなど、競合には真似できないサービスも、順調に拡大しています。
戦略事業では、PayPayとLINE Payの国内QR・バーコード決済事業の連携が着実に進んでいます。2021年8月にMPM(Merchant Presented Mode)連携を開始し、PayPayのユーザースキャン方式加盟店において、LINE Payでの支払いが可能となりました。これにより、LINE Payユーザーの使える場所が増加し、利便性が向上しています。また、PayPayカード、PayPayあと払いも提供開始し、金融事業も順調に拡大しました。加えて、将来的なPayPay事業とのシナジー創出などの観点を踏まえ、決済・金融事業の選択と集中を進めるべく、ワイジェイFX(株)の全株式を譲渡しております。
その他、人財や文化のシナジーにおいては、「企業文化の融合」を重要視しました。各部門が密にコミュニケーションを取り、仕事を進めるなか、LINEとヤフー間での相互理解やルール作りも進みました。
※4:2022年10月12日をもって「Yahoo!ショッピング」に統合

2022年度の重点施策
2022年度の売上収益は、約1.7兆円の2桁増収、調整後EBITDAは、3,315億円から3,400億円のレンジ内での着地を見込んでおります。
また、2022年度は、500~700億円の戦略投資を予定しており、約20%をメディア事業、約50%をコマース事業、約30%を戦略事業に投下予定です。各セグメントの投資方針のもと、事業環境・市況などを勘案しながら、柔軟な意思決定のもと、中長期の成長に資する投資を実行してまいります。
加えて、中長期の成長を加速するため、注力領域を3つ掲げております。
1つ目は、「クロスユースの促進とグループ経済圏の拡大」です。当社グループのユニークなアセットである、LINE、ヤフー、PayPay、3つの起点をつなげ、国内最大級のユーザー基盤を盤石にし、収益化の土台を作ることで、「メディア」「コマース」「戦略」の3事業を、飛躍的に成長させていきます。
2つ目は、「Zホールディングスの強みを生かしたコマース事業の拡大」です。Zホールディングスの特徴を生かしたサービスを強化し、多様なユーザーニーズを取り込むことで、新規購入者数の拡大を目指します。
3つ目は、「PayPayを起点とした決済・金融事業の拡大」です。PayPayユーザーを更に伸ばしながら、カード事業を中心とする各金融サービスとの連携を強化し、PayPayを起点とした金融経済圏を一層拡大していきます。

事業・サービスの成長方針
ヤフーが設立された1996年以降、“ユーザーファースト”を重要な価値観の1つとし、「UPDATE THE WORLD」をミッションとしてサービスを展開してきたZホールディングスグループは、2021年3月に「LINE」と経営統合し、国内総利用者数が延べ3億人超にのぼる国内最大級のインターネットサービス企業グループとなりました。
LINEとの統合により、当社グループは「情報と人をつなぐ(Yahoo! JAPAN)」「人と人をつなぐ(LINE)」「人と決済をつなぐ(PayPay)」という“3つの起点”を所有することになりました。これらは国内のインターネットユーザーの大半に浸透しているため、今後はユーザー同意を前提にIDや会員プログラムを連携させ、得られるデータをAIで解析し、一人ひとりに最適なサービスを提供することで、競合他社との差別化を図っていきます。
そのためには、技術や人財の強化が不可欠です。大胆な戦略投資を通じて、エンジニアを中心とした人財採用の強化や広告プラットフォームの統合、新サービスの開発・顧客基盤の拡大などを加速させ、グループアセットを活用した当社グループ独自の価値・サービスを提供することで、さらなる事業成長を目指します。

- ※1:自社調べ LINEアプリ 国内月間アクティブユーザー数 2022年6月末時点
- ※2:「Nielsen NetView/Mobile NetView Custom Data Feed」をもとにヤフー株式会社が独自に作成
月平均アクティブユーザー数:「Nielsen Mobile NetView」2021年7月~2021年12月の月平均
[Yahoo! JAPAN(ブランドレベル)で集計、スマートフォンからのアクセス(アプリの利用を含む)]
有効数字上3桁目を四捨五入 - ※3:自社調べ:2022年9月30日時点のPayPay登録ユーザー数
メディア事業の成長戦略とKPI
メディア事業
フルファネルにおける「1:1」
マーケティングを実現
- 販促商材も含む広告売上収益の2桁成長
- 調整後EBITDAマージン 40-50%を目安
私たちの競争優位性は3つあります。
1つ目は、豊富なタッチポイント・コンバージョンポイントから得られるファーストパーティーデータです。近年、サードパーティークッキーの活用による、広告ターゲティングの規制が強まっていますが、蓄積されたファーストパーティーデータを活用し、配信精度を継続的に向上することで、効果の高い広告配信が可能となります。
2つ目は、タッチポイントとして、ディスプレイに加え、検索サービスを保有していることです。
3つ目は、当社のユニークなアセットであり、ストック型の商材であるLINE公式アカウント※1です。
これらユニークで多様なアセットを最大限に活用し、競合他社には真似のできない新たなマーケティングソリューションを提供していきます。具体的には、認知・興味・関心といった新規顧客獲得のためのファネルだけでなく、購入・優良顧客化のためのファネルまで一貫して支援できるソリューションを実現していきます。今後は、PayPayを活用した決済に関するデータの蓄積やLINEを活用したCRMなど、消費者に購入や再購買などの行動を促すことで、顧客の定着につながるソリューションを提供していきます。
短期的にはグループ間での広告の相互配信や、営業連携を進めていきます。また、中長期的には、ID連携によるデータの利活用を通じ、広告の最適化や配信精度の向上を実現することで、広告単価を高めていきます。加えて、レポートや広告配信システムを統合し、ビジネスシナジー・コストシナジー両方の実現に向けた施策に取り組みます。これらによって、既存広告の売上収益の最大化と、販促・CRM商材の新たな市場へのアプローチを実現し、広告売上収益の年率2桁成長を目指します。
※1:フリープラン(月額固定費無料)、ライトプラン(月額固定費5,000円)、スタンダードプラン(月額固定費15,000円)の3つのプランがあり、有料プランのLINE公式アカウントからは、毎月継続的に売上を計上

コマース事業の成長戦略とKPI
コマース事業
本質的な価値を磨き込みながら、オンライン/オフライン横断で取扱高最大化を目指す
- 2020年代前半において
EC物販取扱高国内No.1 - LINEを活用したソーシャルコマースを将来的な成長ドライバーへ
物販eコマース市場は年々規模が拡大していますが、日本では未だオフラインの購入が大半を占めており、諸外国と比べてもEC化率は低く、eコマースの利用には拡大の余地があります。
今後、更に取扱高を拡大させるためには、サービスの本質的な価値を磨き込むことが不可欠だと考えており、「物流」と「配送」が重要な要素と認識しています。ヤマトホールディングス(株)との連携や、優良配送※2の取組みを通じ、配送品質を向上させることで、ユーザー体験の持続的な向上を目指します。加えて、2021年7月から、ヤフー(株)、アスクル(株)と(株)出前館、3つのグループアセットを活用した「クイックコマース(即配サービス)」の実証実験を開始し、2022年1月からは「Yahoo!マート by ASKUL」を本格展開しております。
また、2022年10月12日より「Yahoo!ショッピング」と「PayPayモール」を、それぞれの強みをかけ合わせた新生「Yahoo!ショッピング」へ統合・リニューアルいたしました。キャンペーン内容やポイント付与率をよりシンプルでわかりやすい内容に変更することで、お客様がいつ買うとお得なのか、どこで買うとお得なのか迷わずお買い物ができるようになります。統合・リニューアルと併せて毎日最大5%のPayPayポイントがお得に貯まる新しい特典・キャンペーンも開始し、誰でもいつでも欲しいものがお得に買え、日常使いするショッピングモールを目指します。
Zホールディングスの競争優位性は、LINEのソーシャルグラフや、「Yahoo!ショッピング」、「PayPayモール」※3との連携など、グループアセットを活用し、新しい購買体験をユーザーに提供していくことです。Zホールディングスの特徴を生かしたサービスを強化し、多様なユーザーニーズを取り込むことで、将来的には、ソーシャルギフト、ライブコマース、共同購買など、コミュニケーションを軸とした新たなショッピング体験が当たり前になる世界を、私たちが率先して実現していきます。
また、O2O事業ではグループサービスの幅広い客層とLINE公式アカウントを活用し、集客・予約の強化を図り、「トラベル」「飲食」「デリバリー」の3つの領域で、サービス取扱高を拡大していきます。
当社グループは、このような施策を通じ、eコマースの利用を加速させ、日本のEC化率を高めながら、2020年代前半においてeコマースの物販取扱高No.1を目指します。
- ※2:ユーザーへの最短「お届け希望日」が「注文日+2日以内」、かつ出荷遅延率が一定水準未満のストアからの配送
- ※3:2022年10月12日をもって「Yahoo!ショッピング」に統合

戦略事業の成長戦略とKPI
戦略事業
Fintech領域を中心に、
新たな収益の柱を創出
- 売上収益
YoY+20%以上を実現 - 将来的には調整後EBITDA
1,000億円規模の創出を目指す
日本の決済市場においてキャッシュレス比率は2021年時点で32.5%であり、QRコード決済市場はそのうちのわずかに過ぎません。日本政府は消費者の利便性の向上や店舗の売上拡大のために、国内のキャッシュレス比率を「2025年までに40%、将来的には世界最高水準の80%を目指す」ことを掲げています。
当社グループは、Fintech領域における決済を起点に、事業領域をあらゆる金融サービスに広げていくことでマネタイズを本格化していきます。とくに国内で最も浸透しているQR・バーコード決済手段であるPayPayの顧客基盤を活用し、日本のキャッシュレス市場の拡大を強力に推進していきます。
また、決済と親和性の高い「借りる」「増やす」「備える」という金融サービス市場も取り込んでいきます。PayPayを起点とし、LINEの各金融サービスとも新たに連携を強化し、クロスユースを促進します。そして、国内最大級のユーザー基盤を抱える決済・金融のエコシステムを構築し、金融事業の収益拡大を目指します。
その他、決済・金融事業のみならず、様々な新規事業を立ち上げております。例えば、その一つとして、ヘルスケア分野では、LINEヘルスケア社の「LINEドクター」により、いつでもLINE上からオンライン診療を受けられるプラットフォームを提供しています。

※ 自社調べ:2022年9月30日時点のPayPay登録ユーザー数