グループCFOメッセージ

更新日:2022/11/15

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資本効率の向上を意識しながら
積極的な戦略投資により
企業価値の最大化を目指していく

坂上 亮介専務執行役員 グループCFO(最高財務責任者)

これまでのPMIの成果

LINEの安定的黒字化を達成、
今後も資本効率の回復を目指す

2021年3月のLINE(株)(以下、LINE)との経営統合以来、当社グループは各事業分野の拡大と同時に、多岐にわたる領域で統合シナジーを追求してきました。この結果として費用効率化によって2021年3月期で100億円規模のコストシナジーを創出したほか、グループ内のサービス連携によって事業面でも各種のシナジーが顕在化し始めています。実際、2022年3月期は、売上収益 1.56兆円(前年比30.0%増)、調整後EBITDA 3,314億円(前年比12.4%増)と、過去最高を記録することができました。

グループCFOとして特に大きなPMIの成果だと感じるのは、LINEが安定的に利益成長を遂げていることです。経営統合前のLINEは売上収益の面では堅調な成長を続けていましたが、利益面については2018年度から当期純利益の赤字が続くなど、やや不安定な部分もありました。経営統合に際し、このことを気にされていた投資家の方々も少なからずおられたと思います。しかしながら、統合後のLINEはグループシナジー効果によって広告事業を大きく伸ばしており、さらにZホールディングスグループの規律に則って、これまで以上に投資効率を重視した開発やマーケティングを実行したことにより、利益率も大幅に改善し、グループ全体の利益成長に大きく貢献する存在となっています。

一方、LINEとの経営統合によって発行株式数や純資産が大幅に増加したことにより、EPS(一株当たり純利益)や、資本効率の指標であるROIC(投下資本利益率)、ROE(自己資本利益率)などの数値が一時的に低下していることは、財務面の課題であると認識しており、できるだけ早期に経営統合前の水準に戻したいと考えています。これらKPIの改善は、結局のところ「どれだけ利益を稼げるか」にかかっており、各事業分野の成長と、さらなるPMI推進によって統合シナジーを発揮させていくことで、まずは2023年度の目標である調整後EBITDA3,900億円の達成を目指していきます。

LINE売上収益推移
LINE営業利益推移
ROE(自己資本利益率)

今後の投資戦略

それぞれの事業の成長フェーズに応じ
タイムリーな戦略投資を実行

財務部門の重要使命の一つが資本の適切な配分(キャピタル・アロケーション)であり、今後も中長期視点をもって各事業の成長に向けた積極的な投資戦略を実行していきます。2022年度はグループ全体で500〜700億円の戦略投資を実施する予定です。

事業セグメント別に見ると、「メディア」セグメントにはLINE、Yahoo!JAPAN、PayPayという日本国民の大多数が利用する、非常に強力なサービスがあり、グループ全体の収益の柱となっています。今後もこれらの強力プロダクトを中心にEBITDAマージン率40%を目安として、戦略課題であるマーケティングのデジタル化などに向けて継続的な投資を行う方針です。

「コマース」セグメントは、現状はZOZO、アスクル、リユース事業(ヤフオク!・PayPayフリマ等)が収益の中心ですが、日本のEC化率が海外と比べて低いという現状を考えれば伸びしろはまだまだあると見ています。日本No.1メッセンジャーのLINEやNo.1ペイメントのPayPayのユーザー基盤を活用して、他社にない特徴ある「売り場」を創出し成長を図っていきます。すでにこの10月からYahoo!ショッピングとPayPayモールの統合を機に業界最高水準のポイント付与(毎日最大5%)キャンペーンを展開中で、今後もセグメント全体のEBITDAマージンを10〜20%に維持しつつ事業拡大のための投資を継続していきます。

「戦略」セグメントの各事業(PayPay、カード、証券、クレジット等)については、いずれもまだ先行投資のフェーズにあると捉えています。一方で、決済・金融分野では、2023年4月から解禁されるデジタル給与などEコマース領域以上にデジタル化が加速し、新たなビジネス領域の出現が予想されるため、タイミングを逃すことなく積極的に戦略投資を実施していく方針です。同分野では過去にも「PayPay100億円あげちゃうキャンペーン」のような大規模な販促投資を実施し、その結果として現在のNO.1ポジションを獲得できました。今後もそうした大規模な販促投資を行う可能性があるため、セグメント全体の黒字化は数年後になる見込みです。

経営資源配分においては3セグメントすべてについて、サービス創出に不可欠な資源である「人」への投資を最重視しています。また、各事業への予算配分に関しては、私もメンバーの一人である「プロダクト委員会」での議論を通して「どのサービス・事業にどれだけの戦略投資を行うべきか」を決定するとともに、投資後の進捗状況を定期的にモニタリングしています。

また、2022年度は、広告を中心とした景況感の悪化への対処として、全社的なコスト最適化を実施しています。このタイミングで収益構造を筋肉質化することで、将来のより高い投資リターンや、一層強固な収益性につながると考えています。

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M&Aと資金調達の考え方

事業拡大に向けた大型M&Aは常に視野に
財務健全性を確保しつつ外部資金も活用

持続的企業成長に向けた資金配分の選択肢には、当然ながらM&A戦略も含まれます。この数年間、当社グループは2019年のZOZO買収をはじめ大型のM&Aを実施し、成長につなげてきました。今後の成長戦略においてもM&Aは常に視野に入っており、ロングリストも更新を続けています。

M&Aの対象企業については、社内的に大きく3つの基準を設けています。第1は「当社事業との具体的なシナジーを描ける会社」であること、第2に「当該領域におけるNo.1もしくはオンリー1企業である」こと、そして第3に「子会社化が実現できる」ことです。これらは過去のM&A事例、例えば「一休」や「ZOZO」の事例を見ればご理解いただけると思います。

M&Aに要する資金は、事業で稼ぎ出したフリー・キャッシュ・フローで賄うことが基本方針ですが1000億円以上の大規模なM&Aについては、社債や銀行融資などの外部資金の活用も考える必要があります。これまでの大型M&Aによって当社の有利子負債の総額は増加傾向にあり、財務健全性を維持していく必要性もあるため、今後の外部資金調達については「ネットデットEBITDA倍率3倍以内」を新たな基準として導入し、調達を行っていく方針です。

なお当社グループはこの10月からPayPay(株)を連結子会社化 しましたが、「資金」に関する金融業とサービス業の考え方の違いを考慮して、今後は金融事業とネット事業のバランスシートを切り分け、それぞれ個別に開示していく方針です。上記の「ネットデットEBITDA3倍以内」の基準についても、切り分け後のネット事業の利益(調整後EBITDA)をベースにしています。

LINE売上収益推移
PayPayカード取扱高推移
ZOZO取扱高推移
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ESGへの取り組み

グループ全体でマテリアリティに取り組み
サステナブルな社会の実現をめざす

企業が持続的な成長を図るには、財務面の活動と同時に「ESG」に代表される非財務面の取り組みを通してサステナブルな社会の実現に寄与することがますます重要になっています。ZホールディングスではグループCFOである私がオーナーを務める「ESG推進コミッティ」を設置し、各グループ会社(CSR推進部門、コーポレート部門、事業部門)との連携のもとで各種ESG施策を推進しています。

当社グループがミッションとして掲げる「UPDATE THE WORLD」とは、培った情報技術の力で未来を切り拓き、さまざまな社会課題を解決することで企業価値を高め、自らもサステナブルな成長を遂げていくことであり、このミッションを果たすため6つのマテリアリティ(重要課題)を定めています。

たとえばマテリアリティの第1に掲げた「データ/AIを活用した新たな体験(WOW/!)の提供」については、これまでにLINEやYahoo! JAPAN、PayPayをはじめ日本の人々の暮らしを便利に、快適に変える多くのサービスを提供してきました。これからも医療分野でデジタル化や自治体のDX推進など、情報技術やインターネットの力で社会をより便利に、快適にできる領域をさらに広げていきたいと考えています。

また「未来世代に向けた地球環境への責任」についても、グループ全体で2030年度までに「カーボンニュートラル」の実現を目指すことを公表しているほか、2022年6月には事業で使用する電力を100%再生可能エネルギーにする国際イニシアチブ「RE100」への参加も表明 しました。今後は自社グループ内はもちろん、幅広いステークホルダーとの連携を一層強化して、脱炭素社会の実現に貢献していきます。

株主還元の方針

業績向上による株価上昇と
株主配当・自己株取得による利益還元を

当社グループが目指す「中長期的かつ持続的な企業価値の向上」を実現していくには、将来の成長を見据えたサービスへの先行投資や設備投資、資本業務提携などの施策を積極的に実行していくことが重要です。その一方で、日頃より当社を支援してくださっている株主の皆様に報いていくことは、上場会社としての重要責務であることもグループCFOとして認識しています。

株主の皆様に報いるという意味で、私が最も重視しているのは株価上昇によるキャピタルゲインです。しっかりとした投資規律のもとで戦略的に成長投資を行い、事業を成長させ、経営指標とする売上収益とEBITDAを最大化することで、中長期的に株価を上げていくことが皆様への最大の利益還元であると考えます。

もちろん株主の皆様への配当や自己株式取得などの直接的な利益還元施策にも引き続き努めていきます。2022年3月期の株主配当については、前年度と同額の1株当たり5.56円の普通配当に加えて、LINE社との経営統合1周年を記念して皆様への感謝の意を表し1株当たり0.25 円の記念配当を実施しました。1株当たりの配当は5.81円、配当金総額は435億円となります。また自社株式の取得についても財務状況や成長投資、株主配当などとのバランスをとりながら機動的に実施していく方針です。

当社グループはこれからも資本効率を意識しながら積極的な戦略投資の推進によって各事業の成長と企業価値の最大化を目指していきます。皆様には、引き続き当社グループへの温かい、ご理解ご支援を賜りますようお願い申し上げます。

株主配当額
  1. ※1:統合に伴う発行済株式数増加により一株当たり配当額が前年比で減少
  2. ※2:LINEとの経営統合1周年の記念配当0.25円を含む
株主配当性向