Co-CEOsメッセージ
更新日:2022/11/15

守りから攻めへ、PMIを進化させ
さらなる飛躍を目指していきます
川邊 健太郎代表取締役社長 Co-CEO
(共同最高経営責任者)
持続的成長のための
基盤強化はひとまず完了
2021年3月、LINE(株)(以下、LINE)との経営統合により「新生Zホールディングス」が誕生して以来、私は経営トップとして様々な領域でのPMIに全力で取り組んできました。なかでも優先的に注力してきたのは「データガバナンス」の強化です。その直接の契機となったのはLINEにおける情報管理問題ですが、個人情報保護の強化に向けた世界的な潮流や、近年クローズアップされる経済安全保障の観点も踏まえ、デジタルプラットフォーム企業として従来以上に強固かつ動的なガバナンス体制を構築する必要があると考えたことが大きな理由です。これまでの取り組みを通して、データプロテクション強化に向けた技術的な対処はもちろん「3ライン・モデル(3つの防衛線)」の導入や「ユーザー目線での横と縦のガバナンス」の構築など、体制の整備は着実に進んでいます。今後もグローバル展開の基盤となるデータガバナンスのさらなる強化にグループ全体で努めていく方針です。
基盤強化という観点では、2022年3月に実施した「マテリアリティ(重点課題)の改定」も、グループとして目指す方向性を明確にしたという点で、大きな意味があると考えています。LINEというグローバルかつ社会的影響の大きい事業が組み入れられたことで、Zホールディングスグループの果たすべき社会的使命や社会からの期待値はより大きくなりました。その認識のもと、従来のマテリアリティをより大きな視点で検証して「6つのマテリアリティ」として再編し、それぞれについて「実現に向けた取り組み」と「評価指標」を定めました。これらの課題の一つひとつに真摯に取り組んでいくことは、当社グループの持続的成長の必須条件でもあると考えています。
上記のような、データガバナンス強化やグループとしてのマテリアリティ改定などは、「攻め」の展開を期待されていたステークホルダーの皆様にはやや物足りないと感じられたかも知れません。しかしながら、持続的成長の基盤となるデータガバナンスや経営の重要課題について時間をかけて、しっかりと固められたことは、今後の「攻め」の展開においても大きな意味を持ってくると私は確信しています。
もちろん「攻め」の側面でのPMI推進も、この1年半の間にYahoo!マートby ASKUL やLINEギフトとYahoo! JAPAN、ZOZOとの連携の強化 、Yahoo!ショッピング出店ストアへのLINE公式アカウント連携など、各事業でのシナジーが着実に現れてきています。PMIはまだ緒についたばかりであり、今後は本格的にギアを「攻め」に切り替え、積極的な成長戦略を推進していきます。
各分野の強力なアセット間の連携を推進
私が社長に就任した2018年当時のヤフーは、メディア事業のように強い事業がある一方で、SNS分野には目立つサービスが無いなど、総合インターネット企業として不足している部分が色々とありました。そうした状況の中で、強いものはより強く、足りないものは一つずつピースを埋めていくことを自らの使命と意識し、さまざまなM&Aや経営統合を進めてきました。その結果、4年間でメディア事業はより強靱になり、eコマース領域もZOZOの買収により不足していたピースが充たされました。さらに将来的に「絶対に必要になる」と考えていたモバイルペイメント分野については、PayPay事業を、ソフトバンク(株)(以下、ソフトバンク)とも連携しながら、日本最大規模にまで育て上げました。そして2021年のLINEとの経営統合によりSNSの分野でも最強のアセットがグループに加わったことで、メディア、eコマース、SNS、決済・金融など多様な領域で国内あるいはアジアでトップクラスのアセットを擁する、世界でも類を見ない企業グループが誕生しました。
これから進めていく「攻め」のPMIの基本方針は、それぞれが大きな強みを持つグループのアセットをシームレスに連携させ、「Zホールディングスにしかできない特別なユーザー体験」を提供していくことです。「Zホールディングスグループのサービスのおかげで暮らしが便利になった」「お得になった」「効率が良くなった」等々、様々なシーンでより存在価値を実感してもらえる企業グループを目指していきます。
まずはZホールディングスグループの展開する多様なサービス間の連携を徹底的に進めていきます。先述のようにすでに部分的には連携が進んでおり、一定のシナジー効果も出ていますが、今後大きな鍵を握るのはLINE、ヤフー、PayPayという国内最大級のユーザー基盤を持つ3つのサービスの「ID連携」です。ID連携は2023年以降の順次開始を目指して準備を進めており、これが実現することで、各事業におけるユーザー体験の向上はもちろん、国内最大級のユーザー基盤を持つZホールディングスの各事業領域の連携により グループシナジーの最大化・収益拡大が期待できます。

全体最適の視点で
成長投資のための資源を配分
既存事業の強化やサービスの連携に加えて、「攻め」の施策として新たに進出したい分野、伸ばしたい領域にも当然注力していきます。進出を目指す分野のうち、既に戦略投資を開始しているものの一つが社会的な重要度の高い「フィンテック」の領域です。この分野でのサービスをより充実させていくために、2022年10月にPayPay(株)(以下、PayPay)を当社の連結子会社としました。PayPayとより深い連携を行っていくには、連結対象子会社という位置づけにした方がより大きなシナジーを発揮できる、との考えに基づいたものです。今後はソフトバンクと共同で、PayPayを核に決済・金融サービス領域での事業拡大をさらに加速していきます。このほかに、マーケティングソリューションの領域なども大きな伸びしろがあると見ており、店外・店内でのリーチから購買、再購買まで、ユーザーへのフルファネルのアプローチを強化していきます。またコロナ禍を契機に規制緩和が進んでいるオンラインヘルスケア領域においても、さらにユーザーに向けたサービスを充実させていきたいと考えています。
経営統合により、グループの連結業績は売上収益、調整後EBITDAとも「過去最高」を更新し、キャッシュフローや投資余力も高まったことで、さらに大規模な事業展開が可能になっています。戦略投資における資源配分は、経営統合時から導入しているCPO制度を活かし、グループCPOが中心となって各プロジェクトの優先度を「全体最適」の視点から決定していく体制を構築しています。さらに今年度からは、各事業領域のプロダクトを推進する「領域CPO」を設け、これにより意思決定と事業推進をより連動させ、横断的なシナジーの創出を図っています。
また、これまで存在しなかった新たなサービス領域が突如出現するのがインターネット産業のダイナミズムです。絶対に投資すべきと思われる新分野が誕生することがあれば、それに応じて戦略投資の優先順位もダイナミックに変更していきます。
仕事の魅力度で優秀な人財を広く募る
当社にとって「人財 」は最大の資産であり、今後の成長に必須となるAI人財はじめ優秀な技術者を確保していくことは、経営における最優先課題の一つと認識しています。特に現在は、IT業界だけでなく全ての産業分野が「DX推進」の名の下でIT人財の獲得に力を入れており、採用市場の競争は激化の一途を辿っている状況です。この熾烈な競争環境の中で高額の給与・賞与など待遇面の強化で人財獲得を図る企業も少なくありませんが、私たちは待遇面の強化に加えて、働く場としての魅力もアピールしたいと考えています。
一つは仕事自体の魅力度の高さです。日本やアジアの幅広いユーザー層に多種多様な価値をお届けしている当社グループでは、さまざまな技術的チャレンジが可能であり、技術者としての成長機会も多くあります。そして自分の技術によって世の中に大きなインパクトを与えられる可能性が拓けています。そうした情報を前面に押し出すことで、高度な技術を持つ優秀なエンジニアに「ここで自分の腕を試してみたい!」と感じてもらえれば、と思っています。
これに加えて「働き方の柔軟性」という面でも魅力度を上げたいと考えています。既にヤフーではフルリモートワーク制度 を導入し、さまざまな働き方ができる環境を整備しています。同社ではこの1年で中途採用の応募数が前年比で約6割も増えたのですが、こうした制度改革の効果も少なからずあったと私は見ています。こうして獲得した従業員の心身のコンディションを最高の状態にするべく、Zホールディングスグループでは健康経営を推進 しています。
またリモートワーク環境の整備は人財のグローバル化にも寄与するはずです。今後は日本のみならず韓国やアジア、あるいはシリコンバレーなど世界各地の高度なスキルを持った人財の採用も強化していく方針です。さらに言えば国内においても、従来の都市部近郊の人たちだけでなく、さまざまな地方に住む優秀な人財が当社の活動に参画してくれることを私は願っています。
ユーザーをエンパワメントすることは
社会的使命
インターネット産業に携わる人間には、「社会に役立ちたい」という意識を持った人が多いと感じます。私自身にも元々そうした志向はありました。それはグローバルな規模で、社会を一気に変えられることが、インターネットという技術の特長だからということもあるでしょう。
特に2005年頃、ヤフーでモバイルサービスのプロデューサーと社会貢献活動 のプロデューサーを兼任することになったとき、私はインターネット産業の社会的な重要性をあらためて認識しました。台風や地震などの災害情報をヤフーの全ページに掲示したり、インドネシアの大津波被害を支援するインターネット募金を開始、また個人がCO2排出枠を購入できるカーボンオフセットのサービスを始めるなど、さまざまな新しい取り組みに挑戦するなかで、私はインフラとしてのインターネットの使命を再認識すると同時に、社会課題への貢献が企業価値の向上にも直結することを強く実感しました。そして社会に貢献でき、かつ自社の価値も高められる自分の仕事に、大きなやり甲斐を感じたことを覚えています。
ヤフーの社長に就いて以後も、私はSDGs に示されるようなさまざまな社会の課題の解決に役立つことを重視してきました。そして今、持続可能な社会の実現に向けて、全ての企業が力を合わせていこうとしているなかで、当社グループも、より強い意識を持ってサステナブルな活動に取り組んでいこうと思います。
インターネットという技術は、ユーザーの一人ひとりに「力を与える(エンパワメント)」ことができます。かくいう私自身も、インターネットによってエンパワメントされてきた一人です。例えば医療という産業には人の命を救う、あるいは健康を増進するといった基本ミッションがあるように、インターネット産業は「ユーザーをエンパワメントする」ことを基本使命にすべきである、というのが私の経営哲学です。それは当社の企業理念「情報技術のチカラで、すべての人に無限の可能性を。」にも通じるものです。
これからも当社の持つ多様なユーザー接点を活かして、ユーザーも巻き込んだ活動を広げて社会をより良く変革すると同時に、ユーザー一人ひとりの可能性を拡げ、そのエンパワメントを高めることに役立っていきたいと思います。

圧倒的な存在感を持った
AIテックカンパニーに
当社のようなインターネット企業の価値は、独自性の高い優れたユーザー体験をどれだけ多くの人々に提供できるかでほぼ決まると私は考えています。10年後の目標は、各領域における国内トップレベルのサービスを連携させ、当社グループにしかできないユーザー体験を広く提供し、それによって日本国内では事業規模や市場シェアだけでなく社会的な評価という面でも「圧倒的な存在感」をもつ企業グループになることです。それと同時に、高度なサービス提供を裏側で支えるシステムは、その大部分をAIが駆動させているような「AIテックカンパニー」にバージョンアップしていきたいと考えています。これは人は要らないという意味ではなく、その逆です。全てのサービスでAIを最大限に活用することで、自動化できる業務は徹底的に自動化し、人間はよりハイエンドな領域、高度で創造的な仕事に集中できる環境を作っていきたいと考えています。この2つの目標が実現できれば、その成功の方程式をLINEの強いアジア地域に広く展開していくことで、GAFAMやBATのような米中の巨大インターネット企業にも対抗できるメガ・プラットフォーマーも目指せるはずです。
新生Zホールディングススタートから現在まで、私は自分たちの持つアセットを融合させれば、もっと凄いことができる、凄いグループになれるという手応えを何度も感じてきました。社内でも「当社グループは“宝の山”なんだ」と、繰り返し言い続けています。この山に眠るさまざまな「宝」を整理し、磨き上げ、きちんとした形でユーザーや社会に提供していくには、まだ多少の時間を要すると思います。けれどもそれは必ず実現できることであり、当社グループの企業価値はまだまだ高めていけると私は信じています。
ステークホルダーの皆様には、そのような中長期の視点をもって引き続きZホールディングスグループを見守っていただければと思います。